「八溝山観察会」の報告
〜八溝山を散策しモミジを楽しむ会〜
さわやかな風が疎林の中を吹き抜け、落ち葉を踏みしめるカサコソの音、地味な赤黄緑のモミジを見ながら、のんびり散策・観察ができ晩秋の一日を楽しく過ごせました。
当初の計画は10月末でしたが"止事無い"理由で日程を変更しました。それが結果的には大成功!参加した皆さんも大いに満足(?)した観察会になりました。当日まで毎日晴れで何時崩れるか少し心配になりましたが、皆さんの思いが天に通じたのでしょう、思いがけない観察日和で楽しい観察会になったことを報告します。
集合場所の大子町下野宮付近では、久慈川に沿って朝霧が立ち込める幻想的な風景で私たちを迎えてくれましたが、やはり山の天気は思っていた通り全山霧の中でした。
1.実施日時 11月5日(土)9時〜15時
2.コース 八溝五水と八溝天然保存林
3.参加者 一般4名、会員8名の計12名
4.散策の状況
日輪寺入り口から紅葉と緑が入り混じる八溝五水の登山道、かつて日輪寺の修行僧が駆け登ったと言われる参道を散策。目の前に、目の下にどこにも紅葉するブナ・カエデ等の木々が目に入ります。また今年はシラキが色とりどりに染まり、大きなマルバカエデ(ヒトツバカエデ)の黄葉、またチドリノキなど"カエルの手"の形をしないカエデを目にしてビックリ!また透き通るように淡い黄葉のコシアブラに目を奪われているうちに、金性水へ。一休みして黄門様の名付けた水を味わい、鉄水脇の樹齢ウン百年、スギの巨樹の下で記念写真を。"胸突き八丁"の急坂、八丁坂をゆっくりと登り、予定の12時に山頂へ到着しました。まず八溝嶺神社に今日の安全を祈願し、昼食を美味しく(?)食べた後で、ジオパークを研究中の阿萬さんから八溝山地層形成の歴史の講義がありました。山頂は霧が流れ少し寒い中での講義だったので否が応でも頭に浸み込みました。
午後は茗荷林道を車で移動し、「八溝天然保存林」の中を約1時間半の散策。林床はミヤコザサが一面に被い、落ち葉を敷き詰めた細い道から、ブナの大木やウラジロ、アブラツツジ、コミネカエデの大木、ウリハダカエデ等、また足元の落ち葉の影からキッコウハグマがクチクラ層の鮮やかな緑を発散させ自己主張する姿が見えました。またシロヤシオ(ゴヨウツツジ、愛子内親王の御印)の不思議な樹皮(別名マツハダ、マツの樹皮にそっくり)を見て、花がないのでこれがツツジ?またネジキの曲がりくねった樹皮にさらに首を傾げて熱心な観察をしました。
5.新しい発見
・ミズナラの発根
コナラは秋に根を出し地面にドングリを固定。斜面を転がり落ちないように、冬を越し春になり発芽(何て自然は賢い!)する。日常よく目にするほとんどのコナラは固い種皮を剥ぎ、赤い子葉を見せてから根を出す。しかし八溝山八丁坂のミズナラは同じコナラ属なのに、ドングリの種皮を付けたまま根を出していた。これはたまたまなのかも知れないが、その付近で見るドングリは全て種皮を付けたままだ。これはたまたまとは言い難い。種皮を剥がしてからとでは生理的に大違い!(発見者は打越さん)
・オオカサゴケ
茗荷林道を歩いていると道の傍らに見たことも無い植物が突然目に飛び込んできました。高橋さんが同定し「オオカサゴケ」と教えてもらいました。結構珍しい部類に入るコケだそうで、高橋さんは会のホームページに昨年掲載したとポツリ。でもその目は"見てないな!?"と厳しい問いかけ。まあその通りなので仕方が無いが、コケに興味を持ったのは今年の春からなので止むを得ないと自己弁護(?)。ちなみにホームページの「森林インストラクター日記」を参照して下さい。(オオカサゴケを検索)
報告 林 阿萬
「秋の八溝山観察会 感想文」 一般参加 本堂さん(60才代)
いい天気だ!深く晴れ渡った青空だ!いつもより少し早い朝の時間、愛犬ゴールデンレトリバーを散歩させながら、その日の「秋の八溝山観察会」に参加申込みをしたこと改めて確認し、メールで送っていただいたカエデの資料をプリントアウトして、自分で作った(得意メニューの"おにぎり")弁当といっしょにリュックにつめました。副担当の阿萬さんからお誘いを受けて、参加してみようよ、と手を挙げたのは家内のほうで、私は、白状すると、あまり気が進まないけれどまあ行ってみようか、という程度の気持ちで参加しました。皆さん、専門性の高い森林インストラクターなので、一般参加の私たち(少しは木々の名前を勉強中の妻は別として、少なくとも私)は、ただ、ああ、きれいな紅葉だなあとつぶやくくらいが精一杯で、皆さんの着目する観点や説明にはとてもついていけないことは、初めからわかっていましたから。
集合場所から、さらに八溝山を目指してクルマが少しずつ高度を上げていくにつれて、周りの景色は、緑から次第に赤や黄色に色づいた木々が増えてきました。そして、目的地到着。さあ、ここからカエデの観察なのかなあと思っている間もなく、担当の林さんの、的確、かつユーモアあふれるわかりやすい解説が、目の前の紅葉した木々を前に、流れるように始まりました。その大部分を頭に入れることができないままに皆さんについていくうちに、少しずつ、その解説の中に何度か出てくる、木々の名前や、葉っぱを見るポイントが、耳に入ってくるようになりました。オオモミジ、これは大紅葉かな。ハウチワカエデ、これは漢字で書くと、羽団扇楓かな、でも、こういう植物や動物の名前は、学術的にはカタカナで書くのかな。 イヌブナ、この「イヌ」というのは、似て非なる「のようなもの」ということなのかな、とか、ヨウヘイ、これは葉柄のこと、キョシは鋸歯? コシアブラってこんな大木になるんだ。でもコシアブラのコシは腰?越し?それとも濾し?やっぱり漉しだよね。ウリハダカエデのウリは、マクワウリだけれど今はメロンになっちゃって、でもメロン肌とは言わないで瓜肌楓。でも樹脂の色はあまり瓜っぽくないかな、瓜に爪あり、爪に爪無し、久しぶりの急な登り坂で背中に汗を感じたら、もう山頂。八溝山はクルマでずっとあがれるから、私のようなずぼらな初心者にも、楽チンで大変よろしいわけで。
オオイタヤメイゲツ? 大分ではなく大板屋名月?こんがらかっているうちに、自分で握ったおにぎりをあっという間に食べて、でも、久しぶりに自然の中で風に吹かれながらの食事は、実に美味しいものでした。食事の後の、自然林観察は、膝上まで伸びた、隈取りの鮮やかな一面のミヤコザサを掻き分けながら、ネジキ、スクリューウッドかな、瓜肌はメロンスキン、などと、誰にも知られず、午前中とはちょっとパターンを変えて、木々の間から見えてくる見事な紅葉の一つ一つのシーンを、しっかりと心に焼き付け、カメラに収め、すこし雲が厚くなってきた八溝山の散策を、落ち葉を踏み、笹を掻き分ける音とともに、心行くまで堪能しました。この頃には、もう、一般参加も森林インストラクターも忘れ、ただただ、自然の織り成す美しさに感極まっていました。ああ、来てよかった。時折、サーッと吹き抜ける風で、今までかろうじて枝につかまっていたカエデの葉という葉が一斉に舞い落ちる様は、確かに、現世の天国のようでした。
担当の林会長、副担当の阿萬さんはじめ、森林インストラクター茨城の八賢人の皆々さん、一般参加で参加された石崎さんご夫妻、本当に、皆様に感謝です。予習不足だった分は、これから、もう少し、復習します。
"錦秋の 八溝に遊ぶ 森林師" 本堂しかし、森林インストラクターを森林師とは、いささか無理でしたか。お粗末。