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「東京大学植物園日光分園」観察会

参加者全員は9時半前に植物園に着き、入園料330円也を支払って駐車場へ。待つこと1、2分で同園准教授の舘野先生がお見えになり、開口一番「今日の観察会でのご希望は?」で始まり、オープンで好感の持てる人柄に皆さんホットした様子。特に希望もないので先生の考えにお任せし直ぐに園内の観察がはじまりました。

1.日時と場所 7月11日(日)午前9時から東京大学植物園日光分園

2.参加者   高橋・堀内晴生・柿崎・藤井・吉田・杉山(幹事)の各氏と筆者の7名

3.観察会のこと

私見ですが、日光植物園の特徴はほとんどの植物に名札がついていること。特に同じ名前の植物でも繰り返し名札があるので、歩きながら復習ができることではないかと思います。また敷地が広く沢山の種類の植物が見られます。ですから植物、なかでも樹木の名前を知るには絶好の植物園と言えます。

そのような環境なので、この植物園では博物学的な解説は必要を感じないので、舘野先生の動植物の生態の調査研究の結果についての解説をしてもらいました。参加者の興味を引くような面白い話が沢山出ましたので、その内のいくつかについて報告します。

(1)クマの生態

クマは人を知っている個体と知らない個体で行動が異なる。知っているクマは人を見ると逃げることが多いが、知らないクマは人を襲うことが多い。また斜面で出会った時に、クマが人よりも下にいる場合は襲うことは少ないが、高い位置にいるクマは人より優位なポジションにいるので襲う可能性が高い。

メスグマのテリトリーは狭くその地域に入らなければ危険は無いが、オスグマはテリトリーが広く駆け巡っているので、かち合うと危険だ。同時にクマの周辺20メートル範囲に人が立ち入ると突然突進して人を襲う。そのような場合にはクマの方が絶対的に早いので決して逃げきれない。その対策は逃げるのではなく、クマに向かって人が威嚇的な行動、例えば手を広げて大きく見せ、かつ大声を上げてクマに突進すれば、クマも逃げる可能性がある。
(初めての人がそんな勇気がある行動ができるかな?大切なことは近付かないことです。)

(2)カエルの特性

オタマジャクシの後ろ足が出る状態や尾が切れたのを目にすることは多い。しかし前足が出るのを目撃した人はいないのではないだろうか? カエルの前足が生えるのは一瞬のことで毎日毎日継続してみていないと見られない。それは前足が体内で成長し足を瞬時に外へ飛び出すからである。(水槽と毎日にらめっこをすれば見ることが可能?)

またオタマジャクシの口はまん丸で小さいが、カエルの口は左右に裂けて大きな口をしている。これも前足同様に突然変わると部位であるとのことでした。

カエルの中には足に水かきの無いカエルがいる。例えば、アマガエルやヒキガエルであるが、泳げないので水中生活ができない。水に入れると溺れ死んでしまうことがある。

(3)トンボの生態と利用法

トンボの目は動くものを餌と識別する。同じ場所、例えば、葉にたかっている虫が動かなければ餌と気付かず一緒にいられる。またトンボは夏の間は山の上の方にいるが、どうしているのだろうかと調べてみた。可哀想だけれど何匹も乾燥体重を計測すると、平地と山地での平均体重は、同じ大きさのトンボで山地のトンボの方が3倍もあるという。夏の頃は山の上の方が沢山の餌がいるからと結論できたそうです。

ところでトンボがいるとアブやブヨの仲間は突然姿を消してしまうそうです。それはトンボの餌になるのを避ける行動で、体が見えないほどのブヨに襲われてもトンボさえいればブヨは全て逃げ去ると言う。(トンボに紐をつけ持っていればブヨに食われない?)

(4)葉は虫の食害をタンニンで対抗

昆虫などの虫が植物の葉を食べるのは、葉の中の成分であるたんぱく質を摂取するためであるが、葉は虫への対抗措置としてタンニンを含んで防御する。タンニンは虫にとっては消化酵素を消滅させる働きがあるためである。それでタンニンの含有量によって食べられやすい植物と食べられにくい植物との差ができる。

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4.初めて冬虫夏草(カメムシタケ)を見た

昼食を食べ終わる頃に誰だったか突然!これは「冬虫夏草」ではないか? 初めは小さくてよく見えないので皆さん寄って集ってワイワイ…。すると会員のなかで識者と言われる方がポツリと言った。「冬虫夏草だよ。これはきっとカメムシのものでしょう!」

その結果、今度は写真の撮影会になった。それぞれが写真を撮ったけど小さい(全長5センチ、地中3センチ程度)のでピントが合わない…。左上は高橋さんの撮影、左下は筆者の撮影した土の中にあったカメムシの悲しい哀れな姿です。

下の写真は、植物園を入って直ぐ左の駐車場で記念写真(撮影者は杉山さん)。上から下がっている木の葉は、ハンカチノキです。また最後に、「晴れ男」がいましたが残念ながらこの日は時々雨が降って(でも小ぶり…)しまいました。

*日光植物園は田母沢御用邸の隣に位置します。かつて植物園は御用邸の一部だったとかで、園内には序々に植物園が広がっていく様子(名残に頑強な塀が2,3ヶ所残る。)が見られます。

報告 林 聰一郎

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最終更新日:2010年7月27日
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