「春の御前山・八溝山観察会」報告
5月8日(土)、9日(日)に御前山と八溝山の観察会を実施しました。
今年は3,4月の異常な天候で、山は春の訪れが懸念されましたが、両日とも絶好の日和に恵まれ、新たな観察場所で多くの草木と巡り会えました。
8日は当初の計画を変更、今まで話題にあがりながら実現しなかった御前山を、林会長の案内でたっぷり観察し、その後、憩いの森に宿泊して新会員3名の歓迎会を行いました。
9日は、下野宮交差点で当日参加の方と合流して、ドライブで八溝山山頂下まであがり、八溝嶺神社に参拝した後、ここでも初めての天然林保存林コースを巡りました。林会長から事前に詳細な資料を頂きました。昭和27年に指定された保存林で、300年程の樹齢を持つと想像される天然林の長年の自然の変化が見事に私達の前に現れました。熱心な観察に時間を費やし、予定時間を1時間以上オーバーしてしまいました。今回の報告では、参加された方々の感想を主に上梓致します。
1.御前山の観察
土曜日は場所を急遽御前山に変更、集合場所の道の駅「かつら」でお昼に常陸そばを味わった後、初めて皇都川沿いを歩きました。話には聞いていましたし、山崎睦男氏の著書「茨城の野山と水辺を訪ねて」で読んで一度行きたいと思っていましたが、思わぬ形で実現し、しかも少人数で林会長の案内付と言うことで、非常に内容の濃い観察会となりました。
歩き始めてすぐの入口付近ではオオイヌノフグリ、カキドオシ、カラスノエンドウ等のいわゆる「校庭の雑草」の観察でなかなか前に進みませんが、そこから100メートルも歩くといきなり春の山野草のオンパレードで、私がメモした草本の名前だけでも以下約40数種。
クサノオウ、ヤブニンジン、カテンソウ、センボンヤリ、ヤエムグラ、ミヤマハコベ、チゴユリ、タイアザミ、リョウメンシダ、ウワバミソウ、ナルコユリ、ニリンソウ、コンロンソウ、ツルカノコソウ、ヘビイチゴ、ウラシマソウ、ミミガタテンナンショウ、イタドリ、トウゴクサバノオ、ミヤマカタバミ、ジュウモンジシダ、キバナアキギリ、ルイヨウボタン、キケマン、ネコノメソウ、ラショウモンカズラ、メリケンカルガヤ、セントウソウ、ハルトラノオ、タニギキョウ、コオニタビラコ、キュウリグサ、ニヨイスミレ、ベニシダ、フクオウソウ、タチシオデ、etc.
ギンバイソウ、ツリフネソウ、タニギキョウ、ミズヒキなども季節を変えて観察できる由、狭い範囲ながら実に多様性に富んだ場所であることを教えて頂きました。比較的自宅から近いのでリピーターになって観察してみたいと思います。
樹木も豊富で明治時代に植えられたと言う樹齢120年余りのケヤキの純林も見事でした。御前山の名前の由来となった伝説、女帝孝謙天皇と道鏡のロマンスも興味深い話題でありました。
夜は歓迎会で盛り上がり、翌早朝は憩いの森の森林浴コースを歩き、そしてハイライトの八溝山と、実に充実した二日間でした。まだまだ教わる事ばかりですが、気長に勉強したいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。
(新会員 阿萬三司)
2.御前山・八溝山
1日目の御前山は川沿いの舗装道路を歩いたのですが、次から次へと色々な種類の草を観察できてびっくりでした。まず、歩き始めてしばらく行くと黄色い花が。茎を折ると、あれあれ、黄色い汁が出てきてびっくりです。「この花はクサノオウ(瘡の王)という薬草で、皮膚病に効くので、王様のように頼もしいことから名付けられた」という説明。植物の名前の由来を想像(創造!?)してみるのも面白いものだと感じました。
2日目の八溝山は、最初に観察したカエデがまだ芽吹いたばかりの状態で、この後どうなることやらと心配のスタートでした。が、それは杞憂に終わり、新緑の木々やスプリングエフェメラルなどの花々を観察することができました。その中で印象に残ったのは強風で倒れたと思われるミズナラの倒木でした。折れ口を見ると、一番外側に近い部分にストローを束ねたようにポチポチと小さい穴が見られました。これは根から吸い上げた水を葉などに運ぶ導管とのこと。昔、生物の授業で聞いたことがありますが、実際に自分の目で確認したことは初めてで、非常に興味深かったです。2日間とも良い天気に恵まれ、楽しい時を過ごすことができました。どうもありがとうございました。
(新準会員 吉田康宏)
3.八溝山天然林保存林を巡る
平成19年、新会員として初めて八溝山観察会に参加し、多くの草木に遭遇して茨城の豊かな自然を堪能しました。今回は新会員を歓迎する側になりました。前日の御前山が初体験で非常に良かったのに加えて、また違った良い経験をさせて頂きました。八溝山の天然林保存林の名前は聞いていましたし、林会長から八溝山天然林に関する詳細な資料を頂き期待が膨らみました。今年は先月の寒さもあり、八溝山頂はオオイタヤメイゲツ等が芽吹きの時でした。頂上で記念写真を撮った後、八溝五水に下らず稜線をしばらく行く。天然林への分岐からミヤコザサに覆われた斜面を下る。ブナ、イヌブナ、リョウブ、ネジキ、ミズナラ、シロヤシオ等の中に、カジカエデ、エンコウカエデ、チドリノキ、オオミネカエデ等。時折長い経過を思わせるブナの古木やミズナラの倒木。まだ春が浅く、道の所々にかれんなエイザンスミレ、アケボノスミレ、ミミガタテンナンショウ、イワウチワ等がひっそりと咲き始めていました。しかし急な谷を下ると、あたり一面にニリンソウの群生と水の流れ。そこで昼食を取りましたが、まさに桃源郷の趣きが。皆さんの感激もひとしおでした。再び、来た道を戻りましたが、見損なった花がそこここに。分岐に戻ってから車道に出て、道路端には温かさのためスミレ類が群れていました。止まっては写真を取り、時間はあっという間に過ぎて行きました。今回もコケ、シダ博士の高橋さんに私達の知らない世界を懇切に説明して頂きました。
林会長には最初から最後まで、詳細な説明を頂きありがとうございました。秋にも同じコースで、樹木の紅葉や、草木の変化を観察する事を約束して解散しました。
参加の皆様も長い距離、長時間の観察を堪能して頂いたと思います。お疲れ様でした。又参加願います。
(会員 杉山正夫)
4.八溝山観察会に初参加
初めて参加させていただきました。天気もよく、新緑の山を歩く楽しい一日を過ごさせていただきました。皆さん植物に詳しく、大変勉強になりました。小さな若芽のうちからこれは何々だと説明されているのには驚きました。沢の近くにはニリンソウが群落となっており、ミソサザイのさえずりが響き渡っていて、いい雰囲気のなかで昼食をとることができました。沢に向かってどんどん降りて行っているときは、帰りが大変だと思っていましたが、実際に上がっているときは、いろいろ植物の説明を聞いているうちに、登りのことは忘れて、気がついた上の方まで上がっていました。沢沿いと尾根上では若葉の密度が違っており、標高の違いを感じる事が出来ました。予定をオーバーして7時間も歩いていましたが、とても楽しかったので、また機会があれば参加させていただきたいと思います。
(一般参加 松浦秀一さん)
5.春の八溝山観察会に参加して
昨年秋の八溝山観察会の折、春には斜面一面にイワウチワの花が咲くとのことで、今回は期待に胸を躍らせて参加致しました。残念ながら数輪の花しか見られませんでしたが、ブナや、シロヤシオ、リョウブ、などの芽吹きは大変美しく、木肌や葉の特徴などを詳しく教えて頂き、木への興味も少し増したように思います。久慈川の水源も案内して頂き春の山の瑞々しさに心身共に潤う一日でした。山の日没は早く感じますので解散時間はもう少し早い方がよかったかなと思います。
(一般参加 斎藤久美子さん)
6.八溝山観察会
八溝山は久しぶりに遠出した観察会でした。少々疲れが出ましたが、5月9日の歩行距離約12km、2万歩位でした。草本、木本とも同定できなかった樹種も多く、帰宅してからメモと写真と図鑑で確認しているところです。
前日の御前山の樹種・草本も数多く、両日共大変勉強になり秋の八溝山観察会の前に単独行でも行ってみようかとも考えています。いずれにしても、八溝山の沢での昼食は非常に満足しました。
(新会員 山口良幸)
7.八溝山観察会
八溝山観察会ではお世話になりました。今回は天然林内観察ということで八溝山の新たなルートを知ることができ、この山に対する魅力が一層深いものになりました。新緑が清々しく、天気にも恵まれ、カサコソ、カサコソ、葉っぱ踏み踏みの山歩きは、気分最高! ニリンソウ咲く渓流沿いで食べるお昼のコンビニ弁当の味は、普段とは一味違っているような気分でした。2週間前は長野県の上高地近辺を“うろちょろ”していましたが、それに勝るとも劣らない八溝の天然林! メモ帳に記録した樹木や植物の名前をおみやげに、帰りには国道118号線沿いから少し外れた場所にある「金砂の湯」で、ゆったり温泉に!
初夏のいい一日を過ごすことができました。ありがとうございました。
(準会員 打越栄)
8.八溝山観察会メモ “スミレモについて”
八溝山観察会で駐車場へ戻る途中で歩いた車道横のコンクリート壁に、橙色のペンキを塗ったような“変なもの”が見られました。これが緑藻類の一種スミレモと聞いて驚かれた方も多かったようです。橙色は色素カロテノイドを含むためで、和名の由来はスミレの香りがするためとか。一部採取して、帰宅後顕微鏡で観察しました。スミレモは写真のように細胞が糸状に連なり、樹枝状に分枝していることがわかります。
(倍率400倍)。
(会員 高橋雅彦)
総合文責 杉山正夫