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「秋の八溝山観察会」報告

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残念ながら、やっぱり天気予報は当てになりませんでした。しかし時たま霧が出て危ないような雲行きになりましたが、ひごろ行いの良い参加者ばっかりだったので、うまい具合に回復しました。それにしても11月3、4日の突然の寒波は、私達の「八溝山の紅葉」に大きなダメージを与えました。

1.第1部 11月7日(土) 「いこいの森・森林浴コース散策」

1) 午後1時、研修センター集合、直ぐ森林浴コースへの観察に出かけた。コース途上、標高が低いのか大気汚染の影響を受けたのか、元気ないブナ、そして枯れ始めた数本のアカマツを見て皆さんは何かを感じたようだ。そしてヤブタバコを見つけ"茎が途中で切れるのがこの植物の特長です。"と識者の解説に、"フゥ―ン!"と納得したのかしないのか、初めて耳にして言葉がないのかも知れないが・・・。

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森林浴コースはタマアジサイの群生する沢の小道を登ることから始まる。一面のタマアジサイの枯れた花を横に見ながら木製の階段をヨッコイショ!冷たい空気が顔をかすめ、今日11月7日は立冬の身をもって知る冬の気配の登り道だった。

普通だったら汗を流す登りだが、日射しがなかいために、暑さを全く感じない日でした。尾根道を登りながらの足元には、既に実となったキッコウハグマやオクモミジハグマ等が目に入る。辺りにはホツツジの群落が穂状の実を上に向かって伸ばしている。紅葉したウリハダカエデやコシアブラ、そして既に全ての葉を落としたネジキ、またヤブムラサキがほんの少しだけ紫色の実をつけていた。そして約1時間のアルバイトでようやく頂上、塔の広場に到着した。

写真左は、昭和51年第27回全国植樹祭がこの地で開催され、昭和天皇皇后両陛下のお手植え記念樹、2本のスギとヤマザクラ3本が「森」の形に配置され、"風の笹道"を通し山頂の塔広場からはるか足下に見えます。両陛下の記念樹の柵囲いの中にはセンブリ(ここ大子町ではトウヤクと呼びます)が群生しているが、今回は見学なしで早々に宿泊所に戻った。

2) 散策後の行事 毎回のことで、女性ファーストの入浴時に、我ら男性軍は早速「鬼の居ぬ間の洗濯」で酒を飲みだし、残念ですがその後のことは全く記憶にありません。

2.第2部 11月8日(日) 「秋の八溝山観察会」

朝は、青空が少し見え太陽の日射しも暖かく感じる天気に恵まれ、集合場所の大子町下野宮には時間前に全員集合した。参加者の車は合計7台にもなってしまい少々心配だったが、定刻の8時50分に出発し、各自安全運転に徹し9時20分には目的地の駐車場に到着。この日輪寺入口は下界と格段の温度差で、霧の冷たい空気が出迎えてくれた。

1) 日輪寺入口から八溝五水めぐり

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日輪寺入口の駐車場から100mほどの先に「八溝五水」の登山道がある。この道は古くから日輪寺や月輪寺(江戸時代?に焼失)の修験者が修行した山岳道と言われている。入口付近には多数のシラキが生息し、毎年秋になるとその見事な黄葉が見られるが、今年は1枚残らず落葉しシラキの存在を感じさせなかった。また昨年参加者から絶賛されたあのコシアブラですが、淡く黄色く透き通った葉は今年どこに行ったのでしょうか、残り少なく枝にしがみ付いた葉も落ちた葉も、霜に焼かれたのでしょう、縮れ汚れたカロチノイド色に染まっていた。

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この道は500mばかりの雑木林が続き、ブナ、イヌブナ、ミズナラの老木に、シデ、カエデ等の幼樹が落ち着いた山道を形作り、金性水手前付近の樹齢350年〜1000年のスギが谷側に聳え立ち神秘さと逞しさを強調していた。また前後左右頭上や足元のいたる所に見かけるカエデ類は、ハウチワカエデをはじめとして10種類も観察できた。

水戸黄門さまが名付けたと言われる金性水や龍毛水への道には、これがカエデかと驚きのチドリノキや、樹皮が赤く見慣れない針葉樹が、"これは何の木?"こんなに大きなアスナロを見たのは初めて!またクロベ(別名ネズコ)の大木を見上げてなんだろう!?

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八丁坂を登りながら少なくなった落ち葉を踏みしめて、ようやく八溝山の大きなツタウルシの紅葉を、恐る恐る被れるかな?と心配しながら見つけ出した。そして八丁坂の中ほどになると落葉樹で葉を付けている木は皆無に。

足元にはトウヒレンと思えるアザミの枯れた野草がそこかしこに見られた。そこから10分程でようやく山頂の八溝嶺神社の石の鳥居が見えてきた。

2) 八溝嶺神社の参拝と昼食

八溝嶺神社を参拝に際し、赤城さんが全員のお賽銭を纏めて投入し、観察会の安全祈願をしました。また会員の久下沼さんが山頂下の広場で採集した落ち葉を広げ、紅葉教室を開設し楽しいお話に、フーとため息が飛び出したのも束の間、その場所で昼食になると三々五々お握りを頬張って黙々と空腹を満たした。

その後山頂付近のカエデを観察したが、オオイタヤメイゲツやアサノハカエデは、全ての葉が落ちた後で、そのうえ落ち葉は霜で枯れて丸まり、とても観察する対象とは言えなかったが、微かに双方の葉ともに特徴点が観察できて会の面目を保てた。

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昼食後には車道を下り自動車まで戻ったが、今年は八溝山の観光客が多く、道路を走る車が例年の10倍にも感じるほどの込み具合だった。しかもヤミゾブナや大きなダケカンバ等の観察をしながらの下山で危険な車に出会い時々ビックリ!(全員無事に下山できたのは神社へのお賽銭の効果?赤城さんに深謝!)

3) 茗荷林道・鹿ノ又支線への登山道散策

輪王寺入口から車で数分、茨城・福島の県境を越え移動。福島県側は茨城県側よりも気温が低く、既に樹木は丸裸になっていた。それでも予定通りに観察を決行した。

矢祭町への茗荷林道を入り、20mほどで鹿ノ又支線への入り口になる。大きなブナの木の下を通り、このブナの木は初夏には沢山の花を付ける。足元にはブナの実も散見できた。サクサクと枯れ葉の登山道を下りながら、足元の落ち葉を観察した。主たる目的はウリハダカエデよりも幅の狭いホソエカエデの葉を探すためだ。その特徴は葉裏の葉脚部主脈と2本の支脈の接合部にカエルの水かきがあること。しかし小さいのでルーペで見なければ判別でないうえに、葉は霜で縮れていてなかなか見つからない。それでも不完全な「水かき」ではあるが、2,3枚の葉を見つけたのは、何となくホットした思いで多少安堵した。

もう少し下るとシロヤシオの群生地で、別名はマツハダと言うが、老木になると樹皮がマツのようになることからこの名が付いたと言われる。またシロヤシオは愛子内親王のお印で有名。そしてその下方はハウチワカエデやコミネカエデ、アブラツツジの群生地になる。初夏の観察会の時に見たナンバンナナカマドを探したが見つからない。またその下方にはクロベの大樹が数本聳え立っている。茨城県側で見た木に比べるとはるかに大きな木だ。クロベについて、周辺には沢山の実生が芽をだすが、それ等は1,2年生程度でそれ以上のものは全く見られない。"理由はなんなのだろうか?"また実生の辺りの一面にはイワウチワが群生しているが、深い落ち葉の下に隠れていたがようやく確認できた。

4) 観察会の終了

登山道から戻り車の場所に着いたのは午後2時半を少し過ぎた時間だった。予定はそこで散会としていたので、参加いただいた皆さんに観察会の終了の話と来年初夏の観察会の案内をして解散にした。

また、参加者全員が無事に帰宅できたこと。それは事故の連絡がないことから推察できましたが、皆さんが忙しいところを、また遠いところをご参加頂き厚く御礼申し上げます。

3.その他

今回は自然現象で止むを得ないことですが参加者に美しい素晴らしい八溝山を見てもらうことは叶いませんでした。11月3日、4日の寒波で紅葉は決定的なダメージを受けていました。この数年、11月7日前後の日程で八溝山の観察を実施してきましたが、今年の八溝山は、茨城県側では霜にうたれ落葉し、地面の上でクシャクシャに縮れてしまった落ち葉しかなかったのは初めての経験でしたが本当に残念でした。しかしそれにもかかわらずクレームも言わず、楽しそうに散策していただいた参加者の皆さんに感謝して報告書とします。

4.参加者からの感想文(原文の通りですが明らかな誤字脱字は訂正しました。)

1) 今年の春に続いて八溝山の観察会に参加させて頂きました。ちょっと残念なことに久慈川源流はすでにかなり落葉してしまい、もっぱら足下の落ち葉ウォッチングとなりましたが、これもなかなか楽しいということがわかり、新たな発見でした。また「ここからの紅葉は綺麗なんですよ」という説明を聞いて想像力を逞しくした1日でもありました。今度は自分の想像力の正しさ?を証明するために紅葉が綺麗な時期に出かけてきたいものです。インストラクターの皆様にはいつもながら楽しい説明をして頂きどうもありがとうございました。(一般参加 男性 40才代)

2) 春の筑波山観察会に続き今回は2回目の参加となりました。山登りが好きで、植物の名前が分かったらいっそう楽しさが増すのではないかと思い参加させていただきました。

インストラクターの皆様の豊富な知識と丁寧な解説に山を歩く目的がただ上を目指すばかりではないことを改めて認識させていただきました。美しい花にはもちろん誰でも目を留めますし、その名前も覚えやすいものです。しかし、樹木となるとなかなかそうはいきません。何度聞いても覚えられなくてほとんどあきらめて過ごしております。

今回の参加で「もみじ」もまたその種類の多さにほとんど絶望的な気分に陥りました。しかし、採集してきた葉は、大切に押し葉にしているところです。はたしてその名前を、いくつ正確に覚えていることでしょう。頂いた資料と比較検討しながら整理して、少しでも知識としてとどまるようにしたいと思っております。

落ち葉をふみしめて歩く秋の山もいいものですが、春の芽吹きもまた楽しみです。「いわうちわ」の花咲く頃がいまから待ち遠しい気が致します。木や花とのふれあいはその精気で心が浄化されていくような気がいたします。何度聞いても覚えられなくて恐縮ですが、またの機会には是非参加させて頂くことを楽しみにしております。 (一般参加 女性 60才代))

3) 「秋の八溝山の散策と観察会」に参加させていただき有り難うございました。私は、山歩きをはじめたばかりなので、散策開始直後からワクワクしてテンションがあがりっぱなしでした。お聞きしたことをメモし、写真を撮り、落ち葉を拾い・・・これは何かえで?この木の名前は?とあっという間の一日でした。私も、拾った落ち葉のように水につけたらシャキッとする頭や容姿になりたいです。知識豊富なインストラクターの皆様と穏やかな秋の一日を、ご一緒させていただけたことに幸せを感じでおります。春の八溝山も見てみたいので、また参加させて下さい。よろしく御願い致します。m--m  (一般参加 女性 40才代)

4) 八溝山秋のハイクではお世話になりました。最も印象深かったのはコナラやカエデが周囲に多く繁っている中で、ぽつんぽつんとあるモミ、ブナ、アスナロが数100年の大木に育っていることです。樹木は他の種が育たないように様々な策略をめぐらしていると聞きます。それらは周囲の樹木に負けないほど大きく高く育っている大木です。それらの大木を見ていると、大木にはとても強い意志(俺は大きく育つぞ、誰にも負けないぞ)があるように感じてきます。同時に、本来育つはずの気象条件とはちがう気象条件にも柔軟に適応させた結果なのでしょう。似たような樹種が多く繁っている森を散策する経験してきましたが強さと柔軟さを感じたのは大変有意義でした。本当にありがとうございました。("あて"の話は大変面白かったです。何かの折に使わせていただきます。)   (一般参加 男性 60才代)

報告  林 聰一郎

最終更新日:2009年11月15日
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