「出版物の紹介;校庭の雑草」
私達森林インストラクター茨城の会員は、休日になると公園や街路、野原や森など、植物のあるところはどこへでも出かけ、植物に関心のある皆さんに、植物の名前や由来などをお話し、また自然との係りや親しむ方法などを一緒になって勉強しています。
近所の道の傍らに、また身近な公園や畑など、何時も見ている場所に様々な雑草が沢山生えています。また、我が家の庭でも多くの雑草が生息していますが、一体どんな雑草が生え、どんな名前がついているのでしょうか?
雑草と言うと、昭和天皇のお言葉に"雑草と言う植物はない"ことは有名ですが、確かに身の回りで名前のない植物はないと言っても過言ではありません。しかし皆さんは何時も見ている、足元にある雑草の名前を知っているでしょうか。知ることは楽しいことで、名前を知ると雑草の方から"私はここにいますよ!"と声をかけてくるような思いがします。それは都会の雑踏の中で友人を見つけるようなものですが、皆さんにもきっとそのような経験があるでしょう。
ところで名前の知らない雑草を見つけた時、皆さんはどうしますか?おそらく多くの人は植物図鑑を調べ見つからない、そして調べるのをあきらめてしまった経験があるでしょう。でも安心して下さい、その様なときのために、会員の飯島和子さんが判りやすい、調べやすい本を書きました。
名前は「校庭の雑草」。全国農村教育協会が出版し定価は2520円。少し高いのですが、CD−ROM付きなので、自宅でパソコンを使いゲーム感覚で楽しく名前が覚えられるよう工夫されています。
「校庭の雑草」の名から判るようにこの本は教材向けに書かれたようです。しかし内容は教材として利用する以上に、皆さんが身近に見かける大部分の雑草がこの本で調べられます。校庭を想像してみて下さい。校庭には雑草にとって色々な環境があります。乾いたところ、湿ったところ、また日のあたるところや日陰のところ何でもあります。
雑草は種が落ちた場所に芽を出し成長します。適した場所に落ちた種は大きく成長し沢山の花を付けどんどん増やしますが、逆に適さない場所に落ちた種は成長が悪く増えることができません。このように雑草は種が落ちた場所で一生の運命が決まってしまいます。これは生えている場所の環境で雑草が特定できるとも言えます。この本の解説ではまずその雑草が生える場所、空き地やグランド、畑の周りなど、雑草の生活型で分類しています。
第1部では1年を通して各種の植物を簡潔に判りやすく、第2部でその詳細を解説しています。特に、第1部ではロゼットを作るか作らないか、また茎が直立するかしないか等で分類しています。またロゼットは冬の植物観察を楽しくするような工夫もあります。
また本書の写真はきれいに撮れているので調べやすいし、その他に、"雑草の生活型による分類"や"主な科の特徴"など、"植物の名前の話"や「雑草に親しむために」として、"押し葉の作り方"、"ルーペの使い方"や"植物用語の解説"など多方面に渡る解説は、入門者にとって色々な楽しみ方を教えてくれる先生のような本です。特に、"雑草調査"は他の本にないユニークな記事です。第1部では類似種の違いを写真(左がハルジオン、右がヒメジョン)で比較し、さらに第2部では植物の特徴を拡大表示し、一目で違いを判断できる表現はなかなか優れた本であると思いました。
しかし野外に持って出かけて調べるには、解説文がやや長く文字が小さかったのは少々残念です。初心者には解説はできるだけ短く、特徴や類似点を明示する方が利用しやすいと思いました。また雑草の特徴などは文と色違い等で区別できれば、より見やすく判りやすい解説になると思うので、今一段の工夫が欲しいとも感じました。
最後に、この本で紹介した記事と写真は、著者の了解を得て書き掲載しました。
平成21年8月 森林インストラクター茨城 会長 林 聰一郎