「初夏の八溝山観察会」報告
今年も例年通り、「春の八溝山観察会」と「新入会員歓迎会」を兼ね、6月6日に常陸太田市の鍋足山、7日には大子町の八溝山で観察会を実施しました。しかし残念なことに新入会員の参加はゼロで、6日の夜は懇親会になってしまいました。(来年こそは!と祈願しています。)
今年の天候は昨年以上に変化が多く予測できないことが多いようです。樹木などの開花時期も2、3ヶ月も早いものや逆に遅いものも目立ちます。その一環なのか6日の天気は1週間前から予報が毎日変るほど不安定な気候でした。しかし参加者全員の祈りが天に通じたのでしょうネ、6日は雨もあがり、7日は晴れと、今年も八溝山は良い天気に恵まれ楽しい観察会になりました。ご協力いただきました参加各位に感謝いたします。
1.鍋足山の散策(6月6日午後1時〜) 参加者;10名(会員7名、一般3名)
早朝は雨だったが10時頃にはすっかりあがり余り暑くもなく絶好の観察日和になり、常陸太田市役所里美支所前の神社で安全を祈願し開始。最初は少し勾配が続いたが、皆さんは植物に熱中するあまり「あの木何? この草は!」と耳目を奪われ気付かないうちに山中に。登り30分のコースを2時間弱かけて山頂へ。山頂は大きな礫岩の塊でその周囲は断崖絶壁、だが山頂の下まではゆったりした上り坂だったので、明日の八溝山の準備運動(?)のような散策で参加者全員が楽しめたようです。
下山後は里美名所「ぬくもりの湯」につかり、古民家「荒蒔邸」の囲炉裏を囲んで楽しい団欒、そして差し入れの美味しいお酒を頂きました。
*1;観察した植物 コアジサイ、シモツケ、ショウジョウバカマ(実)、ホタルブクロ、イチヤクソウ、ネジキ、ウツギ(ウノハナ)、ミツバウツギ(実)、サルトリイバラ(実)、ハナイカダ(実)そして4種類のシデなど、森林インストラクターの皆さんが楽しんで解説をしました。
*2;募集でお知らせしたミヤマナラは予定地で観察できましたが、ウチダシミヤマシキミは枯れ木ばかりでした。しかし下山を開始しようやく麓近くになってから、ひ弱な個体1本を森林インストラクター茨城の博学者柿崎さんが見つけてくれました。
鍋足山の林地は見るからに長く間伐がないようで、林の中は鬱蒼とし、特に目に付いたヒノキ林では林床に日光が射し込まず、ミヤマシキミやアセビは枯れて白骨状態になっていました。また枯れた木は互いに絡み合い横たわって足の踏み場もなく、数年前に訪れ何度も目にした風景と比べ、見るも無残な林に変化わってしまっていたことに残念な思いが・・・。
2.八溝山の散策(6月7日午前9時半〜) 参加者;17名(会員10名、一般7名)
久しぶりに朝から眩しいほどの快晴で、宿泊組みは午前8時前に集合地「下野宮」に到着し、遠来の参加者を迎え、予定時刻前に八溝山へ出発することができました。(ご協力に深謝!)
例年通り八溝嶺神社にお参りをし、山頂で記念写真を撮影してから久慈川源流へ向った。予定は久慈川源流から鹿ノ又林道の観察を計画していたが、県道八溝線が閉鎖されているため久慈川源流のみに急遽コースを変更した。
今回は八溝山特有の植物として3種類の樹木・野草をターゲットに、カジカエデやアサノハカエデなどのカエデ類、また福島・茨城県境に多く生息するオクモミジハグマ等のハグマ類やサラシマショウマ等のショウマ類など、資料を準備し観察した。しかしながら昨年に比較して花の時期は大きくずれ込んで、やっと見られた花はアブラツツジのみで、それも花の盛りを過ぎ落花直前の悲しい状態だった。
また久慈川源流は昨年の台風(?)の影響か至るところで倒木が登山道を塞ぎ、また数日前の雨が源流にほとばしり、誰も通った気配のない山中を、深い落ち葉と生い茂る野草をかき分けて歩き、ようやくのことで鹿ノ又林道の終点まで到着できた。
休憩と昼食後には、元気なメンバーは林道散策に出かけ、その後午前中に来た道を登り観察をした。登山道の下りと登りで全く視点が異なり、下りで見逃した植物も容易に観察できたことは幸い。
唯一感動した花は、ブナの根元にそっと隠れるように咲く「ギンリョウソウ」(右の写真)でした。この花は別名「ユウレイタケ」と呼ばれ葉緑体を持たない植物で、薄暗い林の中に生息するのでその名が付いたと言われています。
その他矢祭駅へ至る茗荷林道では、タニウツギ(ベニバナニシキウツギ?)の赤い花、白い花が、またオトコヨウゾメに似た「オオミヤマガマズミ」(ミヤマガマズミとオトコヨウゾメの雑種とも言われる変種)の花やツルアジサイの花も咲き始め、しかしシロバナツリフネソウはまだ蕾も付けずまだ咲くはずもなかった。
3.参加者の感想文
八溝山観察会、昨年の秋に続き、楽しませていただきました。花を見るには少し遅かったようですが、初夏の穏やかな緑を、存分に堪能することができました。カエデの数々の名前も、何度も耳にして、だいぶ馴染み深いものになってきましたが、やはりこれらは、秋にもう一度おさらいするということにして…。今回のお気に入りは、ゴヨウツツジの葉っぱでした。花びらのように5枚並んだ葉を下から見上げると、花はなくても、それだけで充分美しく大満足でした。そして、透明感のある白色のギンリョウソウも、とても印象的でした。いろいろお世話になり、本当にありがとうございました。
牛久市 わすれんぼさん(女50代)
6月6日の鍋足山観察、7日の八溝山観察会に参加して多くの知見が得られました。6日は今までの月居山とまた違った植生がみられて、説明を受けながら、名前を次々と書き込んでいきました。草花のほか高橋氏からコケ類やシダの説明もあり、バラエティに富んでいました。出発が遅れて時間が気になるところでしたが、観察時間は十分あり良かったと思います。ぬくもりの湯にはびっくりしました。強アルカリ泉ですっかり温まりました。荒蒔邸での会食は、囲炉裏の炭火の温かさに加えて、酒と新鮮な刺身で気持ち良く酔いました。準備は大変だったと思います。感謝いたします。今後の観察会に定期的に使用させていただければよいと思います。
翌日の八溝山は良い天気に恵まれて良い観察会になりました。林道に入る前から林会長の説明をいただき、会長から頂いたカエデの葉の資料を活用させていただきました。ショウマ類の資料もよく説明されていて、観察に役立ちました。沢に下るまでのペースは良かったと思いますが、戻りはやはり少し早かったと思います。当日はまだよかったのですが、足の疲れは2、3日尾を引きました。2日間の観察会が盛会裏に無事に終えたことは良かったと思います。有難うございました。
牛久市 杉山さん(男60代)
森林浴を兼ねながらの樹木ウォッチング。実物を目前にしての解説はとてもわかりやすいでした。どれも同じように見えるので苦手だったカエデ類、いくらか糸がほぐれたような気がします。今度はこの山の紅葉をぜひ見てみたいと、いまから心待ちにしています。
牛久市 ぶんたくんママさん(女50代)
八溝山自然観察会ではお世話になりました。天候にも恵まれ、麓では夏のような暑さだったとか。でも、八溝山では心地良い空気に包まれ快適な久慈川源流の観察会、なによりでした。足元の植物、樹木、かわいい昆虫などなどインストラクターの皆さんの知識の豊富さにいつもながら圧倒されつつ、わたくし的にはメモ必至。
誰かが「ナンキンナマタマゴ」と言っている声が聞こえてきました。どなたかはナンキンタマスダレとか言っていました。変わった名前だなあと思いつつノートにメモしました。復路のときに分かったのですが、それは私の聞き違いで、本当は「ナンキンナナカマド」。[nanakamado][namatamago]発音でいえば母音が[a,a,a,a,o]で同じ。でも、これを聴き間違えるなんて!これって、加齢性難聴進行症?
水戸市 打越さん(男60代)
*「ナンキンタマスダレ」と言ったのは報告者です。冗談でしたが申し訳ありません。
当初の予報とは打って変わってまずまずの天気となり、鍋足山と八溝山の観察会はとても気持ちのよい有意義な2日間でした。両山とも樹木や草花が豊富で、和気あいあいの中楽しく勉強させていただき、初参加の姉も大変感謝しております。また機会がありましたら姉の参加をよろしくお願いします。次回の八溝山は紅葉の中を観察したいな〜と思っています。
守谷市 増田さん(男50代)
「八溝山自然観察会」に参加させて頂きありがとうございます。楽しい2日間を過ごすことができました。当日の朝は雨が降っていたのに、奥久慈に到着する頃には晴れ間も見えてきて、日曜日の八溝山観察会も晴れ。そして翌日の月曜日はまた雲が厚くなってきて、まさに観察会の間だけ良い天気でした。これも参加者皆さんの日頃の行いが良いから?でしょうか。
私は草木に興味を持って日が浅く、話しについていけるだろうかと心配でしたが、インストラクターの皆さんが丁寧に説明して下さり、十分に楽しむことができました。ただ、一気に沢山情報が入ってきたので少々消化不良気味になってしまいました。これから当日にとったメモや写真を見ながらじっくりと復習したいと思っております。
今回の観察会で一番感じたことは植物の種類の多さです。例えばカエデ類1つをとっても狭い範囲にこんなに沢山の種類が生えているなんてびっくりしました。考えてみれば人間に沢山の人種があるようにカエデだって色々な種類があっておかしくない訳で、きっと今まで気にしていなかったから見えなかっただけなのでしょう。一体、何でこんな顔つき(葉っぱの形、幹の形)の植物になったのだろうと、想像を巡らすのもなかなか面白いものですね。最後に、説明して下さったインストラクターや参加者の皆さま、この企画を準備された役員の皆さま、本当にどうもありがとうございました。
つくば市 吉田さん(男40代)
平成21年6月 報告 林 聰一郎