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「2008年第1回林業研修会の報告」

常陸太田市里川の春は遅い。里川は茨城県の最北部に位置し、近くには里美牧場が、冬には雪が積もり、4月になっても雪が降ることは珍しくない奥山です。私達が林業の研修をする森はそんな茨城県の最北部、福島県境の岡見地区です。それでも27日は里川集落の遅いサクラ祭りが予定され、26日の夜は道路沿いのサクラにライトアップがされていました。

今年の冬はラニーニョ現象とかで寒かったのですが、ようやくコブシの花が咲きました。この花の付き具合でその年の米の豊凶が判ると言われていますが、今年の花は付が良いといっていました。きっと豊作になることでしょう。

26日の朝はゴールデンウイークの走りで、国道349号線は山菜取りの人たちで混雑していました。しかし岡見の山中で山菜取りの人は三々五々とそれ程多くの人を見かけません。この地はまだ完全な春が訪れていないからなのでしょう。

1.実施日時  平成20年4月26日(土)〜27日(日)

2.研修場所  常陸太田市里川岡見地区 荷見さんの所有林

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3.研修作業  ヒノキの植林

4.参加者    延べ人数22名
26日(土)は13名、27日(日)は9名のメンバー

5.研修その1(26日は植え付け)

1)植え付け場所
ヒノキ伐採地(斜度は平均20度弱の南斜面)

2)植樹位置のマーク付け
メジャー(差し棒)で等高線沿いに石灰でマーク付け

3)ヒノキの植林

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①斜面の山側に向い足場を確り、②マーク周辺の位置で枯葉などを鍬で退かし、③石に注意しながら鍬を2,3度振り下ろし、穴を充分に深く掘る。そして④もう一度、力強く振り下ろし、⑤鍬を少し引き、鍬を抜かずにその隙間に苗を入れ(その時に根の周辺に枯葉などが入らないよう注意)、⑥土をかけ少し苗を引っ張りながら(根に土が絡むように)、また苗が倒れないように根元を足で固め、⑦根元が乾燥しないように周りの枯葉などを置き、これで1本が終了します。2日間で1,800本のヒノキの植樹をします。

6.研修その2(27日は補植)

午前中に昨日の残作業で苗木を200本程度植えた後に移動し、数年前に植林したヒノキの補植をしました。ここの傾斜は平均15度程度ですが、枯れた幼木を探し上り下りし、また苗木を取りに降りたりしての連続で、そのうえ2日目の作業なので植林以上に足に疲労感を強く感じました。

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補植をしながら感じたことは、ネズミの害は多数見られたがウサギの害はほんの少しでした。スギは甘いからウサギの食害に遭い、ヒノキは遭わないところから、「ウサギは甘党?」で「ネズミは辛党?」(本当かな?) それ以上に問題は枯れている苗木の90%は人害だったことです。恐らく下刈りで根元を傷つけ、1メータ程に成長してから倒れてしまったと思える幼木があちこちに見らました。苗木が見えないほどに草や雑木が被っているとはいえ、もっと注意深く下刈りをしなければならないことを痛感しました。

*参加者が多く作業が早く終了したので午後は奥久慈いこいの森で植物観察会を実施しました。

7.植林地付近の状況

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まだ植林地の周りは春になりきっていない。研修会の案内で予告したコキンバイの花が見られるかと期待しましたが何処にも見られませんでした。26日は気温が12度もありましたが、直ぐ目の前の福島県境の土塁から冷たい風(陸奥の風?)が吹きつけて来ます。風の音の他に何もない静かな斜面で隣の尾根筋から時折ウグイスの鳴き声が聞こえてきます。このウグイスは茨城弁ではないようで(福島弁かな?)少し感じの違う囀りでした。また、時たま福島県側の新芽も見えない落葉広葉樹の森からアカゲラの鳴き声と恋の季節なのだろうドラミングが心地よく伝わってきました。また目の前のせせらぎからはミソサザイの囀りが耳に突き刺さるように、またビックリするような大きな声が聞こえてきます。例年この周辺でミソサザイの囀りを聞いた記憶はないのですが、途中の集落付近でも耳にしました。(今年は異変?) またこの他にカラ類のサエズリもたくさん聞こえます。

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まだ春とは言えない深い奥山です。里川集落でさえようやくサクラ祭りが翌日です。山の中で目にしたのは野生のワサビの花、ヤマシャクヤクの蕾、不思議にもショウジョウバカマはすでに花びらを落とした姿で立っていました。またユキザサの蕾はあちこちで、タチツボスミレなどのスミレ類は今を盛りに花を付けていました。さらにオシダ、ヤマドリゼンマイ、キヨタキシダ(イッポンコゴミ;食用)等のシダ類は芽に綿を付けていました。さらに食中毒をおこすバイケイソウの新芽や猛毒のヤマトリカブトの幼葉、コチャルメの可愛い花など。シロバナエンレイソウやヤマネコノメ、ニッコウネコノメ(?)、ヒゲネワチガイソウやニオイスミレ、ヤブレガサなどが観察できました。植林地にはツルアジサイやモミジイチゴ、ニガイチゴ、ヤマアジサイやノリウツギなどまだ冬芽が芽鱗を落とした程度の初春の山でした。 こんな山の状態でしたが皆さん元気に研修を終了しました。

森林インストラクター茨城 林 聰一郎 記

最終更新日:2008年5月3日
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